意匠法Q＆A

Q１　意匠法ではどんなデザインが保護されるのですか　
意匠法では、保護対象である「意匠」とは、「物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」と定義しています。　　　
これは、簡単に言えば、「意匠」とは物品のデザインであると言え、物品に係るデザインであれば原則として意匠法上の保護対象になります。
たとえば、工業デザイン（自動車、電化製品）、テキスタイルデザイン（模様が付された織物、ポスター）、ファッションデザイン（コート、靴）、ジュエリーデザイン（指輪、ネックレス）などが挙げられます。また、ビックリ箱（蓋が開くと何かが飛び出る）のような動く意匠も保護対象となります。
　ただ、ウェブサイトの画面デザインやFLASHなどは「物品」に該当しないため、直接的には意匠法上の保護対象にはなっていません（なお、これらも意匠法上の保護対象とすべきだと意見があり、法改正を含め現在検討されています）。

Q２　意匠登録されるとどんな効力が発生するのですか
　出願した意匠が特許庁において設定登録されると意匠権が発生し、日本全国においてその登録意匠と同一又は類似する意匠の独占的実施が認められます。そして、第三者がライセンス契約することなく登録意匠と同一又は類似する意匠を実施したときは、差止請求や損害賠償請求が可能となります。ただし、意匠権の存続期間は有限であり、設定登録された日から１５年が経過するとその権利は消滅します。

Q３　意匠登録をするにはどうしたらよいのですか
　特許庁に対して、意匠と意匠に係る物品を特定して、意匠登録出願をします。そして、特許庁審査官による審査をクリアして初めて意匠登録がなされます。審査官がどのような審査をするかの詳細は次項の「Q４　どのような意匠が登録されるのですか」をご覧下さい。なお、出願方法は電子出願（オンライン出願）が一般的ですが、書類による出願もできます。

　

Q４　どのような意匠が登録されるのですか
　我が国の意匠法は審査主義を採用していますので、意匠法が規定する登録要件を総て充足した意匠のみが登録されます。意匠法は主として以下のような登録要件を規定しています。
（１）工業上利用することができる意匠（意匠法第３条第1項柱書）
　①意匠を構成するものであること
　　ⅰ）物品と認められるものであること
　　　　　「物品」とは、有体物のうち、市場で流通する動産をいいます。したがって、不動産や光、熱、粉状物などは「物品」に該当しません。
　　ⅱ）物品自体の形態であること
　　　　　「物品自体の形態」とは、物品そのものが有する特徴又は性質から生じる形態をいいます。したがって、ハンカチ自体は保護対象になっても、販売展示効果を目的としてハンカチを結んでできた花の形態は「物品自体の形態」に該当しません。
　　ⅲ）視覚に訴えるものであること
　　　　　「視覚に訴えるもの」とは、全体の形態が肉眼によって認識することができるものをいいます。したがって、顕微鏡で拡大しないと認識できないような微細なものは「視覚に訴えるもの」に該当しません。
　　ⅳ）視覚を通じて美感を起こさせるものであること
　　　　　「視覚を通じて美感を起こさせるもの」とは、芸術作品の如く高度な美を要求するものはなく、何らかの美感を起こすものであれば足ります。
　②意匠が具体的なものであること
　　　出願当初の願書の記載及び願書に添付した図面等から具体的な一の意匠の内容が直接的に導き出せないものは、登録が認められません。
　③工業上利用することができるものであること
　　　「工業上利用することができるもの」とは、工業的技術を利用して同一物を反復して多量に生産し得るということで、その可能性があれば足りるとされます。これに該当しない例としては、自然物をそのまま使用した置物や一品製作目的で描かれた絵画などが挙げられます。

（２）新規性（意匠法第３条第1項各号）
　　　意匠登録出願前に日本国内又は外国において既に知られている意匠やその知られた意匠と類似する意匠は、新規性がないため登録されません。ただし、知られてから６ヶ月以内に出願された場合は例外規定（意匠法４条）を利用することで、新規性の要件を免れることができます。

（３）創作非容易性（意匠法第３条第２項）
　　　意匠登録出願前にいわゆる当業者が日本国内又は外国において既に知られたものに基づいて容易に意匠の創作をすることができる意匠は登録されません。
　　　たとえば、市販されているオートバイの形状をそっくりそのまま模したオートバイおもちゃなどはこれに該当します。ただし、ミニカーのように本物の自動車と比べデザインが変形簡略化されていれば、そこの創作性が生まれますから創作非容易性の要件を満たすことになります。

（４）不登録事由（意匠法第５条）
　①公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある意匠
　　　日本国若しくは外国の元首の像又は国旗を表した意匠や我が国の皇室の菊花紋章や外国の王室の紋章などを表した意匠は登録されません。
　②他人の業務に係る物品と混同を生ずるおそれがある意匠
　　　他人の著名な標章やこれと紛らわしい標章を表した意匠などは登録されません。
　③物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠
　　　物品の機能を確保するための不可欠な形状は、技術的思想の創作であり特許法又は実用新案法によって保護されるべきものであるため、意匠法では登録されません。

Q５　意匠出願して登録される確率はどれくらいですか
　登録される確率は出願する意匠によって異なりますから一概には言えません。先駆的デザインや先行意匠調査済の意匠であれば登録される確率は高くなるでしょう。なお、２００２年度の意匠出願は37,230件で登録査定件数が30,810件ですから（特許庁2003年年次報告書）、登録確率はかなり高いものとなっています。

Q６　新規性喪失の例外適用制度とはどんな制度ですか
　Q４で説明しましたように、意匠登録の要件として、意匠登録出願時に新規性を有することが要求されます。したがって、原則として出願に係る意匠が出願時に既に第三者に知られている場合は、その出願は登録されません。しかし、新規性喪失の例外適用制度はこの例外の制度であり、第三者に知られた場合でも、それが自己の行為に起因するときや意に反しているときは、そのときから６ヶ月以内に出願すれば出願時の新規性を喪失しなかったとみなされます。したがって、新製品を販売したらその売行きがよいので販売開始後６ヶ月以内に意匠登録出願をするということもできます。

Q７　関連意匠制度とはどんな制度ですか
　関連意匠制度とは、核となるデザインを本意匠とし、同時にこれに類似するデザインを関連意匠として各々独立した意匠権として保護することで、一つのデザインコンセプトから多くのバリエーションの意匠を保護します。すなわち、核となるデザインを中心として広範な権利の取得が可能となる制度です（図１参照）。詳しい説明は別項の「法的観点からのデザイン知財戦略」をご覧下さい。

図１

Q８　部分意匠制度とはどんな制度ですか
　部分意匠制度とは、物品の全体の形態を意匠登録するのではなく、物品のある部分だけを特定して意匠登録する制度です。通常の意匠登録では物品全体の形態を保護しその類否判断も物品全体で行うため、独創的で特徴的な部分を有する意匠であっても、意匠全体としては非類似となるような形態とすることで意匠権の侵害を回避する巧妙な模倣に対して有効に機能する制度です。なお、関連意匠制度と部分意匠制度を併用することも可能です。

Q９　秘密意匠制度とはどんな制度ですか
　秘密意匠制度とは、意匠が設定登録されてからも3年以内に限ってその意匠を公開することなく秘密にしておく制度です。通常は、意匠が設定登録されると意匠公報が発行され公知になりますが、登録された意匠の販売開始時期が未定で販売開始時期と意匠公報発行時（意匠公開時）を同時期にしたい場合や他社に自社のデザイン傾向を知られたくない場合はこの制度を活用します。

Q10　組物の意匠制度とはどんな制度ですか
　組物の意匠制度とは、同時に使用される二以上の物品であって経済産業省令で定めるものについては一意匠として意匠登録出願できる制度です。意匠登録出願は一物品ごとにしなければならないのが原則であり（意匠法第７条）、組物の意匠制度はその例外の制度といえます。組物の具体例としては、一組の応接家具セット一組のゴルフクラブセット、一組のコーヒーセットなどが挙げられます。

Q11　動的意匠制度とはどんな制度ですか
　動的意匠制度とは、物品の属性により形態が変化する意匠を保護する制度です。物品によっては機能的必然によってその形態が変化し、変化する前と後では形態が異なることもあり、このようなときは動的意匠としての保護が認められています。動的意匠の具体例としては、巻き込み笛、回すことで表面の模様が変化するこま、びっくり箱などが挙げられます。

Q12　意匠法以外にデザインを保護する法律はありますか
　意匠法以外にもデザインを保護する法律はあります。物品のデザインについては意匠法とともに不正競争防止法があります。物品以外のデザインであれは著作権法で保護されることがあります。詳しくは、別項の「法的観点からのデザイン知財戦略」をご覧下さい。

Q13　意匠出願手続きの流れについて
フローチャート　　　
２００２年度の平均審査期間は約８ヶ月でした（特許庁公表データより）。

Q14　意匠登録にかかる費用について
意匠出願については出願時と登録時に費用が発生します。
　出願時の費用は、印紙代、出願手数料、電子出願手数料併せて約９万円で、これに図面作成費用（２～５万）が加算されます。
　登録時の費用は、何年分の登録料（最大１５年分）を納付するかにより費用が異なります。
詳しくはこちら（料金表）をご覧下さい。